年金前借り制度とは?終了した公的制度の代わりになる方法6選

年金受給開始前にまとまった資金が必要になる人の中には、「年金を前借りできないか」と考える方もいるでしょう。かつては「年金担保貸付制度」という公的な仕組みがあり、将来受け取る年金を担保にお金を借りることができました。しかし、この制度はすでに終了しており、現在は利用できません。

それでも、医療費や生活費、介護費用など急な出費に備えるための資金を確保する方法はいくつかあります。

この記事では、年金前借り制度の概要や廃止の背景を解説し、代わりに利用できる6つの資金調達方法を紹介します。

目次

年金担保貸付制度(年金前借り制度)とは

年金担保貸付制度(いわゆる「年金前借り制度」)とは、将来受け取る年金を担保にお金を借りることができた公的制度です。独立行政法人福祉医療機構(WAM)が実施しており、対象は国民年金、厚生年金などの受給権を持つ人でした。

利用者は、生活費・医療費・住宅改修費などの目的で融資を受け、後に支給される年金から返済していく仕組みでした。

しかし、この制度は2022年3月をもって新規受付を終了しています。現在は、すでに借り入れを行っている人のみが返済手続きを続けている状態です。

終了となった背景

制度終了の背景には、年金を担保にした借入による生活再建の難しさや、高齢者の多重債務リスクの増加がありました。

将来受け取る年金を前倒しで使ってしまうと、老後の生活資金が不足するおそれがあるため、国は制度の廃止を決定しました。

その代わりとして、現在は「年金生活者支援資金」などの社会福祉協議会による貸付制度や、民間の不動産担保ローンなどを活用するケースが増えています。

これらは、年金を担保にせずとも生活費や医療費を一時的に補える仕組みとして注目されています。

今後、年金を前借りするような制度が再開される予定はなく、老後資金の確保には、計画的な貯蓄や他の資金調達手段の検討が欠かせません。

年金を担保にお金を借りる方法は他にもある!

年金担保貸付制度(いわゆる「年金前借り制度」)は、2022年3月末で新規受付を終了しましたが、高齢者が急な出費や生活費の不足に直面したとき、資金を確保する手段がまったくないわけではありません。

現在は、年金そのものを担保にしなくても利用できる公的制度や金融商品が複数あります。

ここでは、代表的な6つの方法を詳しく紹介します。

シニア向けローン(銀行)

銀行では、高齢者や年金受給者でも利用できる「シニア向けローン」や「年金受給者専用ローン」が提供されています。

これらは、安定した年金収入を返済能力として評価し、少額から中規模の融資を受けられる商品です。

借入限度額は50万~300万円ほどが一般的で、用途は生活費や医療費、住宅リフォーム費用などに利用できます。

審査はありますが、定期的な収入(公的年金)があることが強みとなり、現役世代に比べて柔軟に対応してもらえる場合もあります。

ただし、返済期間や金利(年3〜8%前後)は銀行によって異なります。年齢上限(多くは75〜80歳)や完済時年齢の制限にも注意が必要です。

貯金担保自動貸付け(ゆうちょ銀行)

「貯金担保自動貸付け制度」は、ゆうちょ銀行の定額貯金または定期貯金を担保にお金を借りられる制度です。

貯金額の90%以内(1,000円単位)まで、預け入れた本人が自分の貯金をもとに借り入れできます。

例えば、定額貯金に100万円預けている場合、最大90万円を自動貸付けとして利用可能です。

利息は担保にしている貯金の利率に+0.25%程度が上乗せされるだけなので、非常に低金利で借りられる点が大きなメリットです。

返済はいつでも可能で、預金を解約すれば自動的に精算される仕組みです。審査不要・即日利用可能なため、「年金前借りの代替手段」として安全かつ現実的な方法といえるでしょう。

生活福祉資金貸付制度(自治体)

「生活福祉資金貸付制度」は、各自治体の社会福祉協議会が行っている公的貸付制度で、低所得者や高齢者世帯を支援する目的で設けられています。

返済能力や世帯状況を確認したうえで、無利子または低利で資金を借りることができます。

高齢者が利用しやすいのは「福祉資金」「生活支援資金」「年金生活者支援資金」などの区分です。

例えば、介護ベッドや住宅改修、医療費の支払いなどにも使えるため、生活の安定を図る支援策として非常に有効です。

申請には収入証明や借入目的の確認書類が必要です。

審査には数週間かかる場合がありますが、返済期間は長め(最長10年程度)に設定されており、無理のない返済計画を立てられます。

カードローン(銀行・ノンバンク)

年金受給者でも利用できるカードローンを提供している銀行やノンバンクもあります。

専用のローンカードを使って必要なときにATMから借入・返済ができるため、利便性が高いのが特徴です。

ただし、すべての金融機関で高齢者が利用できるわけではありません。

申込時年齢が65~69歳以下に制限されていることも多く、年金受給者向け商品を選ぶことが重要です。

金利は年5〜15%前後と高めに設定されていますが、少額を短期間利用する場合には有効な選択肢となります。

生活費の一時的な補填など、急を要する出費に適しています。

ただし、借入と返済の繰り返しによる多重債務には十分注意が必要です。

不動産担保ローン(銀行・ノンバンク)

自宅などの不動産を所有している場合は、「不動産担保ローン」を利用する方法もあります。

土地や建物を担保にすることで、年齢や収入が限られていても高額な融資を受けられるのが特徴です。

例えば、評価額2,000万円の自宅を担保にした場合、50〜70%程度の融資が可能となり、1,000万円以上を借り入れられるケースもあります。

借入金は自由に使えるため、介護費用やリフォーム費、相続税の納税資金など、幅広い用途に対応できます。

銀行よりもノンバンク(信販会社・貸金業者)のほうが審査スピードが早く、収入が少ない高齢者でも利用しやすい傾向があります。

ただし、返済が滞ると不動産を失うリスクがあるため、返済計画は慎重に立てる必要があります。

リバースモーゲージ(銀行・ノンバンク)

リバースモーゲージは、持ち家を担保に生活資金を借り入れ、死亡後に自宅を売却して返済する仕組みです。

年金前借り制度と似ていますが、定期的な年金収入に加えて生活資金を補う目的で利用される点が特徴です。

契約者が生存している間は利息のみを支払うか、利息も含めて死亡時に一括返済する形が一般的です。銀行や自治体(社会福祉協議会)によって取り扱い条件が異なり、利用対象はおおむね満60歳以上が中心です。

老後の生活費を確保しながら自宅に住み続けられることが大きなメリットとなります。

一方で、土地の評価額が下がった場合や長生きした場合には、契約時の想定よりも返済額が増えるリスクもあります。

そのため、契約内容や金利タイプ(変動・固定)を十分確認したうえで利用することが重要です。

年金を担保にお金を借りるなら不動産担保ローンがおすすめ

「年金担保貸付制度(年金前借り制度)」が終了した現在、年金を直接担保にお金を借りることはできません。

しかし、自宅や土地などの不動産を担保にすることで、まとまった資金を確保することは可能です。その代表的な方法が「不動産担保ローン」です。

不動産担保ローンは、所有している不動産の評価額に応じて融資を受けられる仕組みで、年齢や職業に関係なく利用できるケースが多いのが特徴です。

定年後や無職でも、安定した年金収入があれば審査を通過しやすく、老後の生活費・医療費・介護費用・住宅リフォームなど、幅広い目的に活用できます。

老後の安心な生活を維持するためには、年金を前借りするよりも、不動産を有効活用して資金を確保するほうが現実的ではないでしょうか。

協和信用保証株式会社では、不動産担保ローンに特化した融資を行っております。

お客様の状況に合わせた柔軟な審査を提供いたしますので、お気軽にご相談ください。

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