様々な理由により、不動産を2人以上で所有している場合があります。例えば、戸建て物件を購入しようとしたが、購入資金が足りず父親から資金援助を受けたという場合など。ひとつの不動産を2人以上で所有することを共有名義と呼びます。共有名義とは、ひとつの不動産を2人以上が利用しているという意味ではなく、ひとつの不動産物件について2人以上の名義で不動産登記がなされていることを意味します。今回は、この共有名義で所有している不動産を担保にした不動産担保ローンについて、1人が自営業者、もう1人が会社員というケースについて解説していきたいと思います。
共有名義とは何か
共有名義とは、一つの不動産を2人以上の名義で共有して所有することを言います。不動産共有名義の多くは、不動産を購入したいと考えている方の年収や貯蓄が購入したい不動産金額に届かず、誰かの資金的援助を受けて購入する場合に使われています。
例えば、自営業者として事業を成功させてきた父親が、会社員の息子のために5,000万円の家を建てることにしたが、家の購入資金の一部(500万円)を息子にも負担させ、その不動産の所有を父親と息子の2人の共有名義としたケースなどが挙げられます。これ以外にも様々な理由で共有名義での不動産登記がなされています。
また、共有名義で不動産を所有する際に、権利の割合を定めることを共有持分と呼びます。先の例では父親が4,500万円、息子が500万円の資金を出して5,000万円の家を購入しており、出した資金から算出される共有持分の割合は父親:息子が9:1ということになります。
共有名義が自営業社と会社員の場合
では、共有名義が2人いて、そのうちの一人が自営業者、もう一人が会社員であった場合、この不動産を担保に不動産担保ローンを申し込む際にどのような注意が必要なのでしょうか。
まず前提として、共有名義の不動産を担保に融資を申し込もうとする場合、共有名義人全員の承諾、そして連帯保証が必要となります。仮に、融資需要者が自営業者(父)、共有名義人のもう一人が会社員(息子)で、共有持分割合が5:5の場合を考えてみましょう。
自営業をしている父が事業の拡大のためにまとまった資金の融資を受けたいと考えており、所有する不動産を担保に不動産担保ローンを申し込むことを決めたが、共有持分5:5の息子が会社員であるため、総量規制の対象になってしまうのではないか、という懸念点があがってきます。
総量規制とは、貸金業法で定められたルールで、簡単に言えば年収の3分の1の金額までしか融資を受けることができないというものです。父親は事業拡大のために3,000万円の融資を希望しているが、会社員の息子は年収600万円であるため、もし総量規制を受けることになれば3分の1の200万円までしか融資を受けられないことになります。
しかし、貸し手(債権者)が契約するのは主債務者である父親ですので、父親が自営業者であれば共有持分5割の会社員の息子が共有名義に入っていたとしても総量規制を受けることはありません。
借り手(主債務者)が事業のために融資を受け、返済も事業で得た売り上げから返済していくことが明らかな場合、共有名義人である連帯保証人が会社員であったとしても総量規制の対象外となり、不動産担保ローンに申し込むことができるのです。
共有名義の不動産所得に関する確定申告について
共有名義に関して、もう一つ覚えておいた方が良いことがあります。それは、共有名義で所有している不動産で得た収益の確定申告についてです。
共有名義人にどのような属性の人が入っているのかによって、様々なパターンがありますが、基本的なこととして不動産から得た収益は誰しもが確定申告し、納めなければいけない納税額を正確に算出必要があります。
共有名義の不動産所得に関する確定申告で気をつけなければいけないケースは、共有名義人の一人が会社員で、基本的に給与以外の所得がないといった場合です。
共有名義として会社員の方が所有している物件から収益が上がった場合、その共有持分の割合に応じて収益を分配することになります。例えば、会社員の方の持分割合が3割、もう一人の共有名義人である自営業者の方の持分割合が7割で、不動産収入が年間100万円であった場合、持分割合が3割の会社員の方は年間30万円の収入を得ることになりますので、確定申告が必要です。
会社員の方は基本的に会社で年末調整してもらえますので、確定申告をすることはありませんが、共有名義の不動産で収益があがり、その分の所得が年間20万円以上になったときは、忘れずに確定申告をしましょう。
また、もし会社員の方の職場が給与以外の収入を認めないような場合では、共有名義で所有する不動産から利益が出ないようにする、公務員の方を共有名義からはずすなどの対策が必要です。
最後に
今回は、不動産の共有名義について、また共有名義人が自営業者と会社員の場合の不動産担保ローンについて解説してまいりました。共有名義人と不動産担保ローンの関係について、より詳細にご覧になりたい場合は、こちらをご参照ください。
https://kshc.jp/realestate-securedloan/