


相続をきっかけに、家族の間で意見の対立や不信感が生まれてしまうケースは少なくありません。こうしたトラブルは「争族(そうぞく)」と呼ばれ、遺産の分け方や不動産の扱いをめぐって深刻な問題に発展することもあります。
一度こじれてしまうと、解決までに時間や費用がかかり、家族関係の修復が難しくなることもあるでしょう。
この記事では、争族が起こる主な原因と、トラブルを未然に防ぐための具体的な対策をわかりやすく紹介します。
「争族(そうぞく)」とは、本来は家族が円満に財産を受け継ぐはずの相続が、遺産の分け方や手続きの不備などをきっかけに、家族間の争いに発展してしまうことを指します。
相続は「争う続(そうぞく)」と書かれることもあり、財産よりも人間関係の亀裂が問題となるケースが多く見られます。
特に、不動産など分割が難しい財産を相続する場合や、遺言書がない場合にはトラブルが起きやすく、裁判や調停に発展する例も少なくありません。
また、親の介護を担った子どもへの評価や、生前贈与の有無など、金銭面だけでなく感情面の対立が原因になることもあります。
近年では「遺産より家族の関係を守ること」を重視し、早めの遺言書作成や専門家への相談を行う家庭が増えています。
争族を防ぐためには、財産の把握や意思の明確化、そして家族間のコミュニケーションが何より大切です。
相続をめぐるトラブル、いわゆる「争族(そうぞく)」は、財産の多い家庭だけでなく、一般的な家庭でも起こり得る問題です。
司法統計によると、遺産分割をめぐる家庭裁判所の調停件数は年々増加しており、2024年に全国の家庭裁判所で受け付けた遺産分割調停の件数は約1万7000件に上ります。
つまり、争族は特別な家庭の話ではなく、誰にでも起こり得る身近なリスクです。
ここでは、実際に争いが起こりやすい代表的な原因を具体的に見ていきましょう。
相続財産の中でも最もトラブルが多いのが、不動産です。
土地や建物は現金のように平等に分けられず、「誰が住み続けるのか」「売却して現金化するのか」で意見が対立しやすくなります。
例えば、長男が実家に同居していた場合、「そのまま住み続けたい」と主張する一方、他の兄弟姉妹は「不公平だ」と感じることがあります。
また、地方では地価が低いために売却が難しく、都市部では高額評価となって相続税負担が増えるなど、地域差もトラブルの火種になりやすいです。
特に二世代住宅や共有名義のままにしていた土地などは、分割協議が難航しやすいため、生前の段階で名義整理や評価確認をしておくことが重要です。
現金、株式、保険金など複数の財産がある場合、それぞれの配分に対して相続人の希望が一致しないケースも多く見られます。
「公平に分けたつもりでも、受け取る側に不満が残る」「一部の財産を現金化できずに調停まで発展する」といった例も珍しくありません。
特に、相続財産に不動産が含まれると、実際の使用状況や資産価値の違いから公平な評価が難しくなり、意見の衝突が深まります。
遺言書が存在しない場合、遺産分割協議をすべての相続人で行わなければならず、その過程で感情的な対立が起こりやすくなります。
また、遺言書があっても「一部の人に偏った内容」「財産の配分理由が不明確」といった場合は、かえって不信感を招くこともあります。
実際に、形式不備や記載ミスによって遺言が無効と判断され、トラブルに発展した事例もあります。
そのため、専門家のサポートを受けて法的に有効な遺言書を作成し、内容を家族に共有しておくことが重要です。
「生前に住宅資金を援助してもらった子ども」「長年介護を続けてきた家族」など、親との関係性の違いが争いの引き金になることがあります。
相続時には、これらの生前贈与分をどう扱うか(特別受益として加算するか)が問題となりやすく、法的な判断を要するケースも多いです。
また、介護を担っていた家族が「もっと相応の取り分があってもよい」と主張し、他の相続人が反発するケースも見られます。
お互いの努力や貢献度をどう評価するかは、感情が入りやすく非常にデリケートな問題です。
相続人が財産の全体像を把握できていないと、「誰かが隠しているのでは」「不当に操作されているのでは」といった疑念が生まれやすくなります。
特に、不動産や株式、未解約の保険など、確認に時間がかかる財産はトラブルの原因になりがちです。
評価額の算出を誤ると、税額計算や分配比率にも影響が出るため、事前に専門家を交えて整理しておくことが求められます。
相続の話し合いは、単なるお金の問題ではなく、家族関係そのものを映し出す場です。
過去のわだかまりや誤解が再燃し、話し合いが感情的な対立に発展することもあります。
また、親が亡くなってから初めて相続について話し合うケースでは、事前の情報共有が不足しており、誤解や不信感を生みやすくなります。
このようなトラブルを防ぐには、生前のうちから家族間でオープンに話し合い、「誰がどの財産をどう受け継ぐのか」という方針を共有しておくことが大切です。
争族を防ぐためには、相続発生後に慌てて対応するのではなく、「生前の準備」と「家族間のコミュニケーション」が何よりも重要です。
トラブルの多くは、「遺言がない」「財産内容が不明」「家族の認識がバラバラ」といった、準備不足から起こります。
特に、不動産のように分けにくい資産を持つ場合は、早い段階で方針を決めておくことで、家族関係を守りながら円満な相続が可能になります。
ここでは、争族を未然に防ぐための具体的な対策を紹介します。
争族を防ぐ最も確実な方法は、被相続人の意思を明文化することです。
遺言書を作成すれば、誰にどの財産をどの割合で相続させるかを明確にでき、相続人間の解釈の違いや不満を防ぐことができます。
特に、不動産などの分割が難しい資産は、「誰が相続してどう活用するのか」を明確にしておくことで、相続後の混乱を大きく減らせます。
法的効力のある公正証書遺言を作成しておけば、偽造や紛失の心配も少なく、家庭裁判所の検認も不要です。
生前のうちに少しずつ財産を分けておく「生前贈与」は、相続時の負担を軽減し、トラブル防止にも役立ちます。
暦年課税制度を利用すれば、1年間に110万円までの贈与が非課税となり、長期的に行えば大きな節税効果が期待できるでしょう。
例えば、子どもや孫に毎年少額を贈与しておけば、相続時の遺産総額が減り、相続税の対象資産を抑えることができます。
さらに、「住宅取得等資金の贈与」や「教育資金贈与」など、一定の条件を満たせば特例として非課税枠が拡大される制度もあります。
不動産は相続財産の中でも最もトラブルを招きやすい資産です。 共有名義のまま放置しておくと、売却や担保設定、再建築の際に全員の同意が必要となり、意見が割れると手続きが進まなくなります。
そのため、生前のうちに「誰の名義にするのか」「将来的に売却するのか」「誰が住み続けるのか」といった方針を明確にしておくことが大切です。
また、相続税を算出するための土地評価額や建物評価も早めに確認しておくと、納税資金の準備がスムーズになります。
相続税の納税資金が不足する可能性がある場合は、不動産担保ローンを活用して現金を確保することも検討しましょう。
不動産を売却せずに資金を得られるため、「実家を手放したくない」「遺産を維持したい」という家族にも適した選択肢です。
相続は法律・税金・登記の3つの分野が複雑に関わるため、自己判断では思わぬトラブルを招くおそれがあります。
そのため、税理士や司法書士、行政書士、弁護士などの専門家に早めに相談することが重要です。
専門家に相談すれば、相続税の節税対策や、遺言書の書き方、財産の名義変更など、個別の事情に合わせた具体的な提案を受けられます。
公正中立な第三者の立場から家族間の調整を行ってもらえるため、感情的な対立を避けやすくなるでしょう。
どんなに制度や書類を整えても、家族間の認識がずれていれば争族は起こります。
最も基本でありながら効果的なのが、家族全員で「相続について話す機会」を持つことです。
例えば、年末やお盆など家族が集まるタイミングで、「遺産分割の希望」「介護や葬儀の方針」などを少しずつ共有しておくと、万が一の際にもスムーズに対応できます。
話しにくいテーマではありますが、親の意思や子どもの考えを聞き合うことが、結果的に家族の信頼を深め、誤解を防ぐ最良の方法です。
相続時に課される相続税は、原則として「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」に現金で納付する必要があります。
しかし、相続財産の大半が不動産の場合、すぐに現金化するのは難しく、納税資金の確保に悩む人も少なくありません。
このような場合に有効なのが、不動産担保ローンの活用です。
相続した土地や建物を担保に融資を受けることで、不動産を手放さずに納税資金を準備できます。
売却のタイミングを調整できるため、「実家を急いで売りたくない」「市場価格が回復してから売却したい」といった希望にも対応可能です。相続税だけでなく、遺産分割に伴う代償金の支払いや、相続登記・リフォームなどの資金にも利用できます。
協和信用保証株式会社では、不動産担保ローンに特化した融資を行っております。
お客様の状況に合わせた柔軟な審査を提供いたしますので、お気軽にご相談ください。


