


年金受給開始前にまとまった資金が必要になる人の中には、「年金の前借りはできますか」と考える方もいるでしょう。かつては「年金担保貸付制度」という公的な仕組みがあり、将来受け取る年金を担保にお金を借りることができました。しかし、この年金担保貸付制度はすでに終了しており、現在は利用できません。
それでも、医療費や生活費、介護費用など急な出費に備えるための資金を確保する方法はいくつかあります。年金受給者でもお金を借りられる制度や金融商品は複数存在しており、ご自身の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
この記事では、年金前借り制度の概要や廃止の背景を解説するとともに、年金担保貸付の代わりとして利用できる6つの資金調達方法を詳しく紹介します。
年金担保貸付制度(いわゆる「年金前借り制度」)とは、将来受け取る年金を担保にお金を借りることができた公的制度です。独立行政法人福祉医療機構(WAM)が実施しており、対象は国民年金、厚生年金などの受給権を持つ人でした。
利用者は、生活費・医療費・住宅改修費などの目的で融資を受け、後に支給される年金から返済していく仕組みでした。融資額は10万円〜200万円(生活必需物品の購入の場合は10万円〜80万円)の範囲で、金利は年2.8%と比較的低金利で借り入れができる制度として知られていました。
返済の仕組みは独特で、福祉医療機構が利用者に代わって年金を受け取り、あらかじめ定めた返済額を差し引いた残額を利用者の口座に振り込む形式でした。つまり、融資を受けている間は、通常よりも少ない年金額を受け取ることになります。
なお、年金担保貸付とよく混同される制度として、日本政策金融公庫が行っていた「恩給・共済年金担保融資」がありますが、こちらも同時期に終了しています。
しかし、この年金担保融資制度は2022年3月をもって新規受付を終了しています。現在は、すでに借り入れを行っている人のみが返済手続きを続けている状態です。
年金担保貸付制度が終了した背景には、年金を担保にした借入による生活再建の難しさや、高齢者の多重債務リスクの増加がありました。
将来受け取る年金を前倒しで使ってしまうと、返済期間中に受け取れる年金額が減り、老後の生活資金が不足するおそれがあります。実際に、年金担保貸付の利用者が返済期間中に生活保護を受給するといった問題も発生していました。こうした状況を受け、平成22年の閣議決定で制度の廃止が決定され、その後段階的に事業規模を縮小したうえで、令和4年3月末をもって完全に新規受付を終了しました。
その代わりとして、現在は生活福祉資金貸付制度などの社会福祉協議会による貸付制度や、民間の不動産担保ローンなどを活用するケースが増えています。
これらは、年金を担保にせずとも生活費や医療費を一時的に補える仕組みとして注目されています。
今後、年金を前借りするような制度が再開される予定はなく、老後資金の確保には、計画的な貯蓄や他の資金調達手段の検討が欠かせません。
「年金の前借りはできますか」という疑問を持つ方は少なくありませんが、結論として、現在は年金を担保にお金を借りることはできません。
年金担保貸付制度の終了後も、インターネット上には「年金を担保にお金を借りられる」とうたう情報が散見されます。しかし、福祉医療機構(WAM)の年金担保貸付も、日本政策金融公庫の恩給・共済年金担保融資も、すべて新規受付を終了しています。
なお、「年金を担保にお金を借りられます」と宣伝している業者は、すべて違法業者です。年金受給権を担保にした貸付は法律で禁止されていますので、このような業者には絶対に申し込まないようにしましょう。
ただし、年金を直接の担保にしなくても、年金受給者がお金を借りる方法は複数あります。年金でお金を借りる方法を探している方は、次のセクションで紹介する代替手段をご確認ください。
なお、ご自身の年金受給額や生活費の収支バランスを事前に把握しておくことで、どの程度の借入が無理なく返済できるかを見極めやすくなります。年金受給者でもお金を借りられる制度は確かに存在しますが、借入額と返済額のバランスを慎重に検討することが大切です。
年金担保貸付制度(年金前借り制度)は2022年3月末で新規受付を終了しましたが、高齢者が急な出費や生活費の不足に直面したとき、資金を確保する手段がまったくないわけではありません。
現在は、年金そのものを担保にしなくても利用できる公的制度や金融商品が複数あります。
ここでは、年金担保貸付の代わりとなる代表的な6つの方法を詳しく紹介します。
銀行では、高齢者や年金受給者でも利用できる「シニア向けローン」や「年金受給者専用ローン」が提供されています。
これらは、安定した年金収入を返済能力として評価し、少額から中規模の融資を受けられる商品です。
借入限度額は50~300万円ほどが一般的で、用途は生活費や医療費、住宅リフォーム費用などに利用できます。
審査はありますが、定期的な収入(公的年金)があることが強みとなり、現役世代に比べて柔軟に対応してもらえる場合もあります。年金受給者でもお金を借りられる商品が増えているため、まずは年金の振込先に指定している銀行に相談してみるとよいでしょう。普段から取引のある金融機関であれば、信用を得やすいというメリットもあります。
ただし、返済期間や金利(年3〜8%前後)は銀行によって異なります。年齢上限(多くは75〜80歳)や完済時年齢の制限にも注意が必要です。
「貯金担保自動貸付け制度」は、ゆうちょ銀行の定額貯金または定期貯金を担保にお金を借りられる制度です。
貯金額の90%以内(1冊の総合口座通帳につき300万円まで)で、預け入れた本人が自分の貯金をもとに借り入れできます。
例えば、定額貯金に100万円預けている場合、最大90万円を自動貸付けとして利用可能です。
利息は担保にしている貯金の利率に+0.25%程度が上乗せされるだけなので、非常に低金利で借りられる点が大きなメリットです。
返済はいつでも可能で、預金を解約すれば自動的に精算される仕組みです。審査不要・即日利用可能なため、年金前借り制度の代替手段として安全かつ現実的な方法といえるでしょう。
「生活福祉資金貸付制度」は、各自治体の社会福祉協議会が行っている公的貸付制度で、低所得者や高齢者世帯を支援する目的で設けられています。
返済能力や世帯状況を確認したうえで、無利子または低利で資金を借りることができます。連帯保証人を立てる場合は無利子、立てない場合でも年1.5%と低金利で利用できるのが特徴です。
高齢者が利用しやすいのは「福祉資金」「緊急小口資金」などの区分です。例えば、介護ベッドや住宅改修、医療費の支払いなどにも使えるため、生活の安定を図る支援策として非常に有効です。
申請には収入証明や借入目的の確認書類が必要です。
審査には数週間かかる場合がありますが、返済期間は長め(最長10年程度)に設定されており、無理のない返済計画を立てられます。
厚生労働省も年金担保貸付制度の終了後の代替手段として、この制度の利用を案内しています。まずはお住まいの市区町村の社会福祉協議会の窓口に相談してみましょう。なお、厚生労働省では生活福祉資金制度に関する相談コールセンター(0120-46-1999、平日9時~17時)も設けられています。
年金受給者でも利用できるカードローンを提供している銀行やノンバンクもあります。
専用のローンカードを使って必要なときにATMから借入・返済ができるため、利便性が高いのが特徴です。
ただし、すべての金融機関で高齢者が利用できるわけではありません。
申込時年齢が65~69歳以下に制限されていることも多く、年金受給者向け商品を選ぶことが重要です。なかには70歳以上でも申し込める消費者金融のカードローンもあるため、年齢制限を事前に確認しましょう。
金利は年5〜15%前後と高めに設定されていますが、少額を短期間利用する場合には有効な選択肢となります。
生活費の一時的な補填など、急を要する出費に適しています。
ただし、借入と返済の繰り返しによる多重債務には十分注意が必要です。カードローンは利便性が高い反面、計画的に利用しないと借入額が膨らみやすいため、利用限度額を低めに設定しておくなどの対策も検討しましょう。
自宅などの不動産を所有している場合は、「不動産担保ローン」を利用する方法もあります。
土地や建物を担保にすることで、年齢や収入が限られていても高額な融資を受けられるのが特徴です。
例えば、評価額2,000万円の自宅を担保にした場合、50〜70%程度の融資が可能となり、1,000万円以上を借り入れられるケースもあります。
借入金は自由に使えるため、介護費用やリフォーム費、相続税の納税資金など、幅広い用途に対応できます。
銀行よりもノンバンク(信販会社・貸金業者)のほうが審査スピードが早く、収入が少ない高齢者でも利用しやすい傾向があります。最短で申込翌日の融資に対応しているノンバンクもあり、急ぎの資金ニーズにも対応できます。
また、不動産担保ローンは年金担保貸付と異なり、借入金の用途が限定されないのも大きな特徴です。年金担保貸付では利用用途が医療費や住宅リフォームなどに制限されていましたが、不動産担保ローンであれば生活費の補填や税金の支払い、借金の一本化など、自由な用途で利用できます。
ただし、返済が滞ると不動産を失うリスクがあるため、返済計画は慎重に立てる必要があります。
リバースモーゲージは、持ち家を担保に生活資金を借り入れ、死亡後に自宅を売却して返済する仕組みです。
年金前借り制度と似ていますが、定期的な年金収入に加えて生活資金を補う目的で利用される点が特徴です。
契約者が生存している間は利息のみを支払うか、利息も含めて死亡時に一括返済する形が一般的です。銀行や自治体(社会福祉協議会)によって取り扱い条件が異なり、利用対象はおおむね満60歳以上が中心です。
老後の生活費を確保しながら自宅に住み続けられることが大きなメリットとなります。
一方で、土地の評価額が下がった場合や長生きした場合には、契約時の想定よりも返済額が増えるリスクもあります。
そのため、契約内容や金利タイプ(変動・固定)を十分確認したうえで利用することが重要です。
年金受給者がお金を借りる際には、いくつかの注意点があります。年金担保貸付制度が終了した現在、安全に資金を確保するために以下のポイントを押さえておきましょう。
まず、「年金を担保にお金を借りられます」と宣伝している業者には絶対に申し込んではいけません。年金受給権を担保にした貸付は法律で禁止されており、このような業者はすべて違法です。被害に遭った場合は、最寄りの消費生活センターや警察に相談しましょう。
また、複数の借入先からお金を借りることで返済が困難になる「多重債務」にも注意が必要です。年金収入には限りがありますので、月々の返済額が年金受給額の3分の1を超えないよう、余裕を持った返済計画を立てることが大切です。借入前に返済シミュレーションを活用して、具体的な返済額を確認しておくことをおすすめします。
さらに、借入方法を選ぶ際には「金利」「返済期間」「年齢制限」「用途の自由度」を総合的に比較しましょう。公的制度は低金利ですが融資まで時間がかかる傾向があり、民間のローンはスピードが早い反面、金利が高めです。ご自身の資金ニーズや緊急度に応じて、最適な方法を選択することをおすすめします。
加えて、高額療養費制度や母子父子寡婦福祉資金貸付金など、借入以外の公的支援制度も確認しておくとよいでしょう。医療費が高額になった場合は高額療養費制度を利用すれば自己負担を軽減でき、そもそも借入をせずに済むケースもあります。
なお、お住まいの地域の自立相談支援機関では、家計に関する無料相談を受け付けています。どの方法を選べばよいか迷った場合は、まず専門の相談窓口を利用してみるのもよいでしょう。
「年金担保貸付制度(年金前借り制度)」が終了した現在、年金を直接担保にお金を借りることはできません。
しかし、自宅や土地などの不動産を担保にすることで、まとまった資金を確保することは可能です。その代表的な方法が「不動産担保ローン」です。
不動産担保ローンは、所有している不動産の評価額に応じて融資を受けられる仕組みで、年齢や職業に関係なく利用できるケースが多いのが特徴です。
定年後や無職でも、安定した年金収入があれば審査を通過しやすく、老後の生活費・医療費・介護費用・住宅リフォームなど、幅広い目的に活用できます。カードローンなどの無担保ローンと比較して金利が低く、返済期間も長期に設定できるため、月々の返済負担を抑えた計画を立てやすい点が大きなメリットです。
年金受給者がお金を借りる方法のなかでも、不動産担保ローンは低金利で高額融資が可能なため、年金担保貸付の代わりとして多くの方に選ばれています。リバースモーゲージとは異なり持ち家を売却する必要がないため、自宅に住み続けながら資金を確保できます。年金を前借りするよりも、不動産を有効活用して資金を確保するほうが現実的ではないでしょうか。
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