


親や祖父母から生前贈与を受ける際には、「相続時精算課税制度」を利用できます。
実際にこの制度を利用し、贈与税の負担を抑えながら財産を受け取っている方も少なくありません。
では、相続時精算課税制度を利用した場合、相続放棄はできるのでしょうか。
この記事では、相続時精算課税の基本的な仕組みや、相続放棄との関係、相続税の取り扱いなどについて、詳しく解説します。
相続時精算課税制度は、贈与税の特例制度の一つです。
60歳以上の父母または祖父母が、18歳以上の子や孫に贈与を行う場合に利用できます。
通常、贈与には年間110万円を超えると贈与税がかかりますが、この制度を適用すると2,500万円までの贈与が非課税となり、超過分についてのみ一律20%の税率で贈与税が課されます。
さらに、2024年からは新たに年間110万円の基礎控除が加わり、より使いやすい制度へと改正されました。
相続時精算課税制度では、贈与を受けた財産は贈与者の死亡時に「相続財産」として合算され、相続税が再計算されます。
すでに支払った贈与税はこの相続税から控除され、相続税のほうが少なければ差額は還付、多ければ追加納税となる仕組みです。
ただし、この制度は一度選択すると撤回できません。
また、制度を適用するためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、税務署へ「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
相続時精算課税制度を利用していても、相続放棄は可能です。
相続放棄とは、相続が発生した際に、被相続人の財産や債務を一切引き継がないことを家庭裁判所へ申述することで成立する法的な手続きです。
生前に贈与された財産は、その時点で受け取った人のものになっているため、相続放棄をしても返還する必要はありません。
相続放棄をすると、法律上は「最初から相続人ではなかった」とみなされます。
そのため、通常であれば被相続人の財産や債務を一切引き継ぐことはなく、相続税の申告や納付の義務も発生しません。
しかし、以下のように例外的に相続税が課税されるケースもあります。
生命保険金や死亡退職金など、被相続人の死亡によって支払われる財産は「みなし相続財産」と呼ばれます。
これらは民法上の相続財産ではないため、相続放棄をした人でも受け取ることが可能です。
ただし、相続税法上ではこれらも課税対象とされており、放棄した人でも相続税の申告・納付が必要になる場合があります。
相続時精算課税制度を利用して生前贈与を受けていた場合、その贈与分は贈与者の死亡時に相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。
たとえ相続放棄をしていても、これらの贈与分については相続税の計算から除外されることはなく、相続税の納税義務がなくなるわけではありません。
相続放棄は、財産も債務も一切を引き継がないという法的手続きです。
債務が重たい場合には有効な選択肢ですが、以下のような注意点を踏まえたうえで、放棄すべきかどうかは、慎重に判断しましょう。
相続放棄は、家庭裁判所に申述し受理されることで法的に有効となります。
しかし、一度放棄が認められると、原則としてその決定を撤回することはできません。
相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、相続権は次順位の相続人に移ります。
その結果、他の相続人が債務を多く引き継ぐことになる場合があります。
特に借金などマイナスの財産が多いケースでは、他の家族にとって想定外の負担となる可能性があるため、家族間で事前に共有しておくことが大切です。
相続放棄をすると、相続財産を一切受け取ることができなくなります。
プラスの財産が多い場合でも、それを確認する前に放棄してしまうと、1円も相続できないまま手続きが確定してしまいます。
そのため、不動産や預貯金などの全容がわかっていない段階での放棄は避け、負債の有無や資産内容を正確に把握したうえで判断することが大切です。
相続放棄をした場合でも、相続時精算課税制度による贈与分やみなし相続財産を受け取った場合には、相続税の納税義務が生じることがあります。
相続税は、原則として被相続人の死亡から10か月以内に申告・納付を行う必要があり、納税資金の準備が間に合わないケースも少なくありません。
特に、相続財産の大半が不動産である場合、手元に現金がないことで納税が困難になることもあるでしょう。
こうしたケースでおすすめしたいのが、不動産担保ローンの活用です。
不動産担保ローンであれば、相続した不動産を売却することなく、まとまった資金を調達できます。
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