不動産担保ローンでは、資金需要者が所有する不動産を担保に設定し、その不動産の評価額によって融資可否の審査を行うという方法が一般的ですが、この方法以外にも、親族などの第三者を保証人に立て、親族が所有する不動産を担保に設定して融資可否の審査を行うという方法があります。この場合の保証人について、「連帯保証人」と「物上保証人」の二つの種類があることをご存知でしょうか。今回はこの連帯保証人と物上保証人の違いについて解説していきたいと思います。
第三者が保証人となる不動産担保ローンとは
資金需要者自身が所有する土地や建物などの不動産を担保提供する不動産担保ローンが一般的ですが、資金需要者が不動産を所有していない場合には、親族などの第三者が所有する不動産を担保提供し、その第三者が保証人になることで不動産担保融資を受けることができます。
また、資金需要者が不動産を所有している場合でも、その不動産が希望する融資金額に達するだけの不動産評価額ではない場合、親族などの第三者が所有する不動産を担保提供してもらい、保証人となってもらうことで追加融資の申し込みが出来る場合もあります。
さらに、資金需要者が法人の場合は、法人の役員が所有している不動産を担保設定し、役員個人が保証人になることで申し込みが可能な不動産担保ローンもあります。
ここで出てきた「保証人」には、「連帯保証人(れんたいほしょうにん)」と呼ばれるものと、「物上保証人(ぶつじょうほしょうにん)」と呼ばれるものとが存在します。連帯保証人と物上保証人の違いとは一体何なのでしょうか。
連帯保証人と物上保証人の違い
不動産担保ローンにおける連帯保証人と物上保証人の違いは、返済責任の範囲にあります。連帯保証人の場合は、主な債務者と同じ責任度合での借金返済義務が生じます。つまり、債務者の借金返済が困難な状況となってしまった場合は、連帯保証人が所有する不動産を売却し、その売却金額を融資資金の返済に充当することになります。しかし、その売却資金による返済でも債務完済とならない場合、残った金額に対する返済義務は、主な債務者と連帯保証人の双方に同等に残ります。
一方で、物上保証人の場合は、担保に設定した不動産の評価額の範囲内に限り借金の返済義務が生じるため、不動産の売却金額全額を返済に充当しさえすれば、仮に借金が残っていたとしても物上保証人には残債務の返済義務は残らず、主な債務者のみに返済義務が残ります。
不動産担保ローンにおける保証人となる際には、連帯保証人と物上保証人とで返済責任の範囲、つまりはリスクの範囲が異なるため、保証人に立つ際の契約時には注意が必要です。
物上保証人の事前求償権とは
保証人には「事前求償権」と呼ばれる権利が与えられています。求償権とは、保証人が肩代わりしてあげた返済分を主な債務者に請求することができる権利を意味していますが、事前求償権とは、その求償権を実際に返済を肩代わりする前の時点から行使することができる権利のことを言います。ただし、「連帯保証人」の場合には事前求償権が認められていますが、返済責任が不動産評価額内と限られている「物上保証人」の場合には事前求償権は認められていないため、こちらも注意が必要です。
物上保証人の時効援用権とは
保証人に与えられている権利の中にはもうひとつ、「時効援用権」と呼ばれるものがあります。時効援用とは、正確には消滅時効の援用といい、長期間借金を返済していない状態にある債務者(時効の成立によって利益を受ける人)が、時効期間を経過した場合に時効の成立を主張し、債務が消滅している、つまりはもう借金を返済する義務がないということを確定させる意思表示をすることを言います。
保証人の時効援用権とは、債務者(時効の成立によって利益を受ける人)だけでなく、その保証人が時効成立を主張し、主な債務者だけでなく自身の債務も同時に消滅していると援用することができる権利のことを言います。
時効援用権は連帯保証人、物上保証人のどちらにも権利があります。
まとめ
今回は、第三者を保証人とする不動産担保ローンについて、連帯保証人と物上保証人の違いについて解説してきました。連帯保証人と物上保証人では、責任の範囲に違いがあります。
連帯保証人と違って物上保証人には事前求償権が認められていないことや、連帯保証人と同じく物上保証人にも時効援用権が認められていることなど、連帯保証人と物上保証人では、返済義務・責任に関する特徴に違いや共通する点があるため、連帯保証人としての契約時にはメリット・デメリット を慎重に判断する必要があります。
さらに、例えば不動産を相続する際など、不動産の元の所有者が物上保証人として不動産を担保提供していた場合には、相続人がその保証人としての義務をそのまま相続しなければならないということも起こり得ます。相続の際には、担保権付きの不動産ではないかどうかを事前に調べることを推奨します。
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