


生前贈与は、相続税の節税や財産の円滑な承継を目的に活用される制度ですが、実際に行うとなると「いくら費用がかかるのか?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
贈与には税金のほかにも、名義変更に伴う手数料や専門家への報酬など、さまざまな経費が発生します。
この記事では、生前贈与にかかる代表的な5つの費用を解説し、無駄な出費を抑えるための税金対策のポイントも紹介します。
不動産など価値のある資産を贈与する際には、複数の税金や手数料が発生します。単に「贈与するだけ」と思っていても、予想以上の費用がかかることがあるため、事前に把握しておくことが大切です。
ここでは代表的な費用を5つ紹介します。
生前贈与でもっとも大きな負担となるのが「贈与税」です。年間110万円を超える贈与には、原則として贈与税がかかります。
税率は10%〜55%で、贈与額が大きくなるほど税率も高くなる「累進課税方式」が採用されています。
例えば、18歳以上の子に親から1,000万円を贈与する場合、贈与税額は約177万円、500万円を贈与する場合の贈与税額は約48.5万円となります。
このように、贈与額が数百万円を超えると、税負担も無視できない金額になるため、暦年課税や相続時精算課税制度などの活用を検討するとよいでしょう。
不動産を贈与された側には、「不動産取得税」が課されます。
これは不動産を売買ではなく贈与で取得した場合でも発生する税金で、課税標準は固定資産税評価額です。
住宅用の不動産であれば、税率は原則3%(令和9年3月31日までの特例)となっています。
たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の住宅を贈与された場合、不動産取得税はおおよそ60万円です。
ただし、条件によっては軽減措置が適用されることもあるため、都道府県税事務所に相談するとよいでしょう。
不動産の名義変更には、「登録免許税」がかかります。
贈与による所有権移転登記の場合、課税標準である固定資産税評価額に対して税率は2%です。
これは相続による登記の税率(0.4%)と比較すると高いため、生前贈与を選択する際は、この点も十分に考慮する必要があります。
たとえば評価額が1,500万円の不動産を贈与した場合、登録免許税は30万円となります。
不動産の登記手続きを行う際は、専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士の報酬は地域や案件の内容によって異なりますが、一般的には5万円〜10万円程度が相場です。
また、報酬の中には登録免許税の代理納付や書類作成費用も含まれていることが多いため、依頼前に明細を確認することをおすすめします。
贈与税の申告書作成を税理士に依頼する場合には、その報酬も必要になります。
相場としては3万円〜10万円程度が一般的ですが、財産の評価や申告内容の複雑さによってはさらに高額になることもあります。
特に不動産の贈与においては、評価額の算定や課税方法の選択によって税額が大きく変わるため、経験豊富な税理士に相談することは非常に有効です。
不動産の生前贈与には、相続トラブルを未然に防げる、相続税の節税につながるといったメリットがあります。
そのため、「必ず避けるべき」とは言えません。
しかし、贈与には高額な税金や手数料が伴うため、安易な判断は禁物です。
具体的には、贈与税のほか、不動産取得税や登録免許税が発生し、相続による取得よりも費用負担が重くなる傾向があります。
さらに、名義変更や税申告などの手続きも煩雑で、専門家のサポートが必要になるケースも少なくありません。
また、贈与から3年以内に贈与者が亡くなった場合、贈与財産は「生前贈与加算」の対象となり、相続税の課税財産に含まれてしまう点にも注意が必要です。
こうした点を踏まえ、不動産を直接贈与するのではなく、担保にして得た資金を現金で贈与する方法や、相続時精算課税制度を活用するなど、代替手段も視野に入れて総合的に判断することが大切です。
税理士など専門家に相談し、自身の状況に合った最適な方法を選びましょう。
不動産の生前贈与は手続きや税負担が大きいため、代替手段として「不動産担保ローンを活用して現金を贈与する」方法が注目されています。
この方法であれば、名義変更の必要がなく、贈与税の非課税制度を利用することで税負担を抑えながら子どもや孫への支援が可能です。
ここでは代表的な非課税制度を4つ紹介します。
30歳未満の子や孫に対し、教育目的で現金を贈与する場合、1人あたり最大1,500万円まで贈与税が非課税になります。
学校の授業料や入学金はもちろん、塾、予備校、留学費用なども対象です。ただし、学校以外の支出については上限500万円までの非課税枠となります。
制度を利用するには、金融機関を通じて専用口座を開設し、支出内容の領収書提出などの手続きが必要です。
適用期限は2026年3月31日までです。
18歳以上の子や孫に対し、自宅の新築・取得・リフォームのための資金を贈与する場合、一定の条件を満たせば贈与税が非課税となります。
非課税枠は、省エネ等住宅で最大1,000万円、それ以外の住宅で最大500万円です。
要件として、受贈者の合計所得が2,000万円以下であることや、住宅の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であることなどがあります。
制度の利用期限は2026年12月31日までです。
18歳以上50歳未満の子や孫に対し、結婚、妊娠、出産、育児に関する費用として現金を一括贈与する場合、最大1,000万円までが非課税となる制度です。
具体的には、結婚式費用、不妊治療、出産準備金、保育園の入園料などが対象になります。
ただし、利用期限は2025年3月31日までと近づいているため、検討中の方は早めの対応が求められます。
もっともシンプルな方法が「暦年贈与」です。
年間110万円以下の現金を贈与する場合、贈与税は発生しません。この制度は毎年繰り返し利用できるため、長期的に資産を移転する際に有効です。
ただし、形式上だけ贈与が分割されたと見なされると、課税対象になるおそれがあるため、贈与契約書の作成や通帳の管理方法にも注意が必要です。
今後、制度見直しの動きもあるため、最新情報の確認も欠かせません。
不動産などの資産を生前に贈与することで、相続発生後のトラブルを回避したり、資産を計画的に引き継がせたりすることが可能になります。
しかしながら、不動産の生前贈与には高額な贈与税や登録免許税、不動産取得税などが発生するため、事前の十分な検討が不可欠です。
税負担を抑える方法としては、教育資金・住宅取得資金・結婚や子育て資金の贈与に対する非課税制度を活用するのが効果的です。これらの制度を利用すれば、不動産を直接贈与することなく、現金による支援が非課税で可能になります。
ただし、「まとまった現金が手元にない」というケースも多く見られます。
そんなときは、不動産を担保にしたローンを活用するという選択肢があります。
不動産担保ローンを利用すれば、自宅などを売却することなく、必要な資金を確保し、柔軟に子や孫への支援ができます。また、自宅に住み続けながら資産活用できる点も大きなメリットです。
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