


大切な財産をどのように引き継ぐかを考えるうえで、「生前贈与と相続はどちらが得なのか?」はとても重要なテーマです。
特に家や土地などの不動産は財産評価額が大きいため、選び方によって税金の負担に大きな差が生まれます。
贈与税と相続税には異なる仕組みと控除があり、どちらが得かは状況によって異なります。
この記事では、生前贈与と相続の違いや注意点を整理し、家や土地を対象とした具体的な税金対策について分かりやすく解説します。
生前贈与と相続は、どちらも財産を家族へ移転する方法ですが、財産を渡すタイミングや課税方法に大きな違いがあります。
まずは、以下の比較表で生前贈与と相続の違いを確認しましょう。
比較項目 | 生前贈与 | 相続 |
財産を渡す時期 | 亡くなる前 | 亡くなった後 |
かかる税金の種類 | 贈与税 | 相続税 |
作成する書面 | 贈与契約書 | 遺産分割協議書 |
メリット | ・毎年110万円までの基礎控除を利用しながら少しずつ移転できる ・相続財産を前もって減らせるため将来の相続税対策になる ・生前に財産の行き先を明確にでき、争族リスクを抑えられる | ・相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人)を活用できる ・配偶者控除や小規模宅地等の特例など節税制度が豊富 ・死亡時の財産一括評価のため、贈与より手間が少ない |
デメリット | ・110万円を超えると贈与税が高率(最大55%) ・相続開始前7年以内の贈与は相続税の課税対象に持ち戻しされる ・不動産贈与には登録免許税や不動産取得税が必要 | ・亡くなった後に一括で相続税が課税される ・遺産分割協議が長引くと相続登記や申告期限(10ヶ月)に間に合わないリスクがある ・相続人同士の争いが発生しやすい |
国税庁「令和5年分相続税の申告事績の概要」によると、令和5年の相続税課税割合は全国平均で約9.9%、約10人に1人です。
多くの世帯は基礎控除内に収まる一方、都市部では不動産価格の上昇で課税対象になるケースが増えています。
相続税と贈与税は課税ルールが異なるため、どちらが良いかは財産の種類や総額によって変わります。
ここでは、税金負担を抑えたい方に向けて、よくあるパターン別に「生前贈与と相続、どちらがお得か」を考えてみましょう。
現金や預貯金は、その金額そのものが相続税の財産評価額となります。
生前贈与の場合、毎年110万円までの贈与なら非課税枠を活用できます。
例えば親が子へ毎年110万円を10年間贈与すると、合計1100万円を非課税で譲渡することが可能です。
ただし2024年以降は「相続前7年以内の贈与持ち戻し」ルールが強化され、7年以内の贈与は相続財産に加算されることになりました。
そのため、長期的に少額ずつ贈与するなら生前贈与が有効ですが、直前にまとめて渡す場合は、相続のほうが基礎控除を使える分、有利になるケースがあります。
不動産の相続税評価額は、路線価や固定資産税評価額をもとに算出されるため、市場価格より低く算定される場合があります。
相続では「小規模宅地等の特例」を使えば、居住用宅地は最大80%減額可能です。
一方、生前贈与では固定資産評価額がそのまま贈与税評価となり、さらに登録免許税や不動産取得税も課税されます。国税庁の事例集でも「自宅を相続で取得する場合は特例を使ったほうが税負担は軽くなる」ことが示されています。
不動産を生前贈与する場合には、「相続時精算課税制度」や「贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)」などの非課税特例を活用することが重要です。
引継ぐ予定の財産が、相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人)を大きく超えるなら、生前贈与を計画的に行い、相続財産を減らしておくことが有効です。
例えば夫婦と子2人で基礎控除は4800万円です。
1億円の資産を持つ場合、すべてを相続すると課税対象は5200万円となります。
一方、毎年110万円ずつ10年間贈与すれば相続財産は1100万円減り、課税額を大きく圧縮できます。
ただし、贈与税率は相続税率より高いため、暦年贈与を長期的に活用する計画性が求められます。
総額が基礎控除以下なら、相続を選んでも税金が発生しません。
贈与をしても節税効果はほぼなく、むしろ贈与税や不動産取得税が余計にかかる可能性があります。
節税目的なら無理に贈与する必要はなく、遺言書を整えて相続をスムーズに進めるほうが合理的です。
生前贈与と相続は、手続きの煩雑さに大きな差があります。
生前贈与では、贈与契約書の作成、贈与税申告、不動産なら名義変更登記や登録免許税の納付が必要です。贈与を毎年行う場合はその都度これらを繰り返すことになります。
相続の場合、被相続人が亡くなった後に「遺産分割協議」「相続登記」「相続税申告」を一度だけ行えば済みます。
ただし、相続人が複数いる場合は話し合いが長引くリスクはある点に注意が必要です。
いずれの場合も、税理士などの専門家のサポートを受ける、適切かつスムーズに手続きを進められるでしょう。
生前贈与と相続はどちらを選んでも課税対象となるため、早めの資金計画が重要です。
現金で贈与税や相続税をまかなえない場合、不動産担保ローンを活用すれば自宅や土地を担保に必要な資金を確保できます。
特に、相続税の納付期限は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内と短いため、納税資金の調達手段として不動産担保ローンを活用するケースも多いです。
協和信用保証株式会社では、不動産担保ローンに特化した融資を行っております。
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