中小企業の資金調達方法として一般的なものは、銀行などから融資を受ける方法です。しかし、銀行の融資を受けるためには、審査に通過しなければなりませんし、保証人や担保などを用意しなければならない場合もあります。そこで今回は、中小企業にとって手軽でしかも低コストで利用できる私募債（しぼさい）についてご紹介します。
私募債とは？
私募債の説明をする前に債券のご説明をします。
債券は、国や地方自治体、企業などが資金調達のために発行する有価証券のことです。債券を購入すると、利払日に利息が支払われ、償還日（しょうかんび）に額面金額が払い戻されます。償還日とは、債権の満期日のことです。購入した債券はいつでも売買することができますが、時価の変動があるため償還日前に売ってしまいますと、額面の金額よりも払い戻される金額が多くなることもありますが少なくなってしまうこともあります。国が発行する債券のことを国債、会社が発行する債券のことを社債といいます。社債は不定期で募集がかけられているので、購入したい会社が投資家を募集されているときに証券会社から購入することができます。
社債は証券会社の口座を持っている人であればだれでも購入することができますが、私募債は特定の人だけが債券を購入することができるというものです。私募債は、少人数の人だけに債券が発行する少人数私募債や銀行が債券を買い取る私募債などがあります。
少人数私募債とは
少人数私募債とは、50人未満の人に対してだけ勧誘できる債券のことをいいます。このとき注意しなければいけないことは、50人未満の人に対してだけ債券を売ることができるのではなく、勧誘できる人の人数が50人未満だということです。担保、審査、保証協会等への保証料や社債管理者、有価証券届出書・報告書が不要なので、中小企業の資金調達方法として手軽に利用することができます。
銀行が買い取る私募債とは
少人数私募債の場合は、会社が債券を購入してくれる人を募って資金を調達しますが、銀行が買い取る私募債の場合は、会社が発行した債券を銀行に買い取ってもらって資金調達を行います。そのため銀行が買い取る私募債の場合は、銀行の審査に通過しなければ利用することができません。また銀行が私募債を買い取る場合は、確実に投資してもらえる人を探すことができる点はメリットになりますが、銀行の審査に通過しなければならないことや保証や事務手数料などの費用が発生する点が少人数私募債と異なります。
私募債のメリット・デメリット
私募債は、銀行などから融資を受けるよりも手軽に利用できる資金調達方法ですが、メリットだけではなくデメリットもあります。
融資を受けるときとは違い、担保や審査、保証協会などの保証料や有価証券届出書・報告書が不要な点などは、融資が通りにくい中小企業の資金調達方法として一番大きなメリットになるといえます。
しかし、少人数私募債の場合は、50人未満の人にしか勧誘することができず、債券の満期日の償還日には一括返済しなければいけないので、返済時の負担が大きくなるというデメリットがあります。また、債券を買い取ってもらえる人の人数が制限されているため、大きな資金の調達方法としてはあまり適していない点もデメリットといえます。
私募債が難しい場合は不動産担保ローンで
銀行に債券を買い取ってもらう私募債の場合は別ですが、少人数私募債の場合は、審査などがなく保証料などの手数料も支払う必要がないため、融資が難しい中小企業の資金調達方法として有効な手段の1つといえます。しかし、債券を買い取ってもらえる人の人数が限定されていることや信頼して債券を購入してもらえる人がいなければ、希望額の資金調達は難しくなります。また融資などと違い、償還日に一括返済しなければならないので、返済時の負担が大きくなる点も大きなデメリットになってしまうことがあります。
銀行の融資を受けることも難しい、私募債による資金調達も難しい場合は不動産担保ローンの利用を検討してみましょう。不動産担保ローンを利用するメリットは、担保となる不動産の価値が高ければ銀行から融資を断られていたとしても、審査に通過する可能性があることです。また、返済期間が長く設定されているため返済の負担を減らすことができます。万が一返済ができなくなってしまった場合は、担保の不動産を失う可能性があるというデメリットもありますが、私募債では希望額の資金調達が難しい場合は、資金調達の手段として、不動産担保ローンの利用を検討してみましょう。
最後に
私募債は、投資してくれる人を限定することで審査や保証料がなく資金調達ができるため、中小企業の資金調達方法として有効な手段の1つだといえます。しかし、投資してくれる人を限定することで大きな金額の資金調達をしたい場合は、希望額の資金を集めることが難しいだけではなく、償還日に一括返済をしなくてはいけない点も大きな負担になってしまうことがあります。
銀行からの融資が難しい、私募債では希望額の資金調達が難しい場合は不動産担保ローンの利用を検討してみましょう。銀行などの金融機関でも不動産担保ローンを扱っていますが、会社の資金調達のために不動産担保ローンの利用をする場合は、銀行よりも大きな融資が受けられる可能性がありますので、不動産担保ローンを専門に扱っている会社に相談することがおすすめです。
