会計事務所に会計業務を委託していたり、経理は社員に任せていたりする経営者の場合、帳簿を見てもすべての意味を理解するのは難しいという人は多いのではないでしょうか。しかし、経営が悪化したり、予想外の事態が起こったりしたときは資金繰りをする必要があるため、資金繰りに関連する言葉や意味は覚えておきたいですね。そこで、今回は流動資産とは何か、流動資産を担保に融資を受ける方法とはどんなものなのかについてご紹介します。
貸借対照表の見方を覚えましょう
流産資産について知るためには、まずは貸借対照表の簡単なしくみを理解しておくことが必要です。貸借対照表とは、会計上の期末の財務状態を資産の部を左側に、負債、純資産の部を右側にまとめて財政状態がわかるようにまとめられた表のことをいいます。バランスシートと呼ばれることもあります。貸借対照表は左右の数字が同じなるようになっていて、「資産」=「負債」+「純資産」という形で記載されます。
資産とは
資産には、流動資産と固定資産があります。
流動資産とは、現金化が容易にしやすい資産のことをいいます。現金以外にも預金、製品、売掛金、有価証券、受取手形などが流動資産に含まれます。
固定資産とは、事業を行うために長期にわたって所有している資産のことで、1年以上を超えて使用しているものや投資目的で長期間保有している資産のことをいいます。固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分類されます。有形固定資産は、土地、建物、機械類、車両など、無形固定資産は、借地権、特許権など、投資その他の資産は、長期貸付金、投資有価証券などに分類されます。
負債とは
負債にも流動負債と固定負債があります。流動負債と固定負債の区別の基準は、返済期間の違いです。流動負債は、決算日後1年以内に支払いや返済の必要があるものです。固定負債は、支払いや返済期限が決算日後1年を超えるものをいいます。
純資産とは
純資産とは、会社法が改定されるまでは自己資本と呼ばれていたもので、現在は資産から負債を引いた差額とされています。純資産は、資本金(株主が会社に投資したお金)と余剰金(会社が生み出した利益を積み立てたお金)で構成されています。
流動資産を担保に融資を受ける
製造業であれば資本金3憶円以下、または常時雇用する従業員数が300人以下の中小企業の会社であれば、在庫や売掛金などの流動資産を担保に融資を受けることができます。在庫となっている製品やすでに掛売で販売した商品の代金は、商品が売れたときや、売掛金が入金された時点で現金に換えることができますが、製品が売れる前や売掛金が入金される前に現金化することはできません。しかし、現金化される前に支払い期限が来てしまうと、支払いができなくなってしまう可能性があります。
在庫品や売掛金は比較的簡単に現金にしやすい資産のため、これらの流動資産を担保に融資を受けることができます。在庫品は、完全に製品にはなっていない仕掛品、半製品、原材料、貯蔵品なども該当します。
これらの流動資産を担保に融資を受け、返済方法には随時返済や売掛債権の支払い期日に一括返済などがあります。ただし融資には審査があるため、融資が受けられないケースもあります。
不動産担保ローンを利用する方法も
在庫品や売掛金などの流動資産を担保に事業資金を調達することもできますが、土地などの固定資産を担保に不動産担保ローンを利用して融資を受ける方法もあります。たとえば売掛金を担保に融資を受けた場合、売掛金が入金された時点で一括返済しなければならないことも多いです。しかし、土地などの不動産を担保に融資を受ける場合は、融資金額が大きいだけではなく返済期間を長く組むことが可能なので、無理のない返済計画を立てることができます。一時的に融資を受けたいのであれば流動資産を担保に事業資金を調達する方法を利用することも可能ですが、返済までの期限が短いことも多いので無理のない形で融資を受けることが必要です。事業を行っていると不測の事態が起きてしまうケースもあります。融資を受ける場合は融資を受けられる金額だけではなく、無理のない返済ができる融資方法を選ぶことも重要なポイントになります。
もちろん、不動産担保ローンを利用する場合も、所有している不動産の価値によって希望する額の融資が受けられないケースもありますし、万が一返済ができなくなってしまった場合は担保となっている不動産を失ってしまう可能性もあります。融資を受ける場合は一時的に事業資金が必要なのか、または長期に渡って返済していく必要があるのかなど状況に合った融資方法を選ぶようにしましょう。
最後に
売掛金、製品、在庫品、原材料、半製品などの流動資産を担保に事業資金を調達することができる流動資産融資は、資産を現金化する前に融資を受けることができる便利な制度です。しかし、流動資産を担保にしているため、流動資産が現金化できた時点で一括返済が必要になる融資もあるため、返済方法を事前に確認しておくことが大切です。無理なく長期で返済を希望する場合は、土地などを担保に融資を受けることができる不動産担保ローンがおすすめです。高額な融資が受けられる可能性があるだけではなく、返済期間を長期に設定することができるので、無理のない返済計画を立てることが可能です。
ただし、どの融資方法を選択する場合もメリットだけではなくデメリットもあります。メリットだけではなくデメリットも理解した上で、利用することが大切です。