個人事業を開始したい人が最初に悩むことは、資本金がなくても事業を始めることは可能なのかということではないでしょうか。始める事業の内容によっても異なりますが、事業を始めるために必要な開業資金や利益が上がるまでの当面の運転資金を確保してから始めることが一般的です。会社を設立するのではなく個人事業主でも資本金は必要なのか、また資本金がなくても事業を始める方法はあるのかについてご紹介します。
そもそも資本金とは何か？
資本金とは、事業を始めるときに自分が持っている自己資金のことをいいます。資本金は、当面の運転資金と言い換えることもできます。個人事業主の場合は、法人登記をするという概念がないため登記の面から考えると資本金を準備する必要はありません。ですが、事業を始めるときには設備投資も必要ですし、当面の運転資金は必要です。始めた事業を軌道に乗せるまでに必要なお金を準備してから、事業を開始することが望ましいといえます。
資本金と元入金（もといれきん）の違い
法人として事業を始めるときに、当面の運転資金として準備したお金のことを「資本金」といいます。個人事業主として事業を始めるときに、当面の運転資金として準備したお金のことを「元入金（もといれきん）」といいます。元入金は、個人事業主が帳簿をつける際に使用する勘定科目なので法人では使用しません。
資本金と元入金の大きな違いは、資本金は変わることはありませんが、元入金は毎年金額が変わることです。期首と期末では元入金の金額は変わりませんが、年度が替わるときに元入金を計算しなおします。
今期の元入金+控除前の所得+事業主借－事業主貸＝翌期の元入金
個人事業主が資本金（元入金）を準備する意味とは？
個人で事業を開始する場合、会社の資本金にあたる元入金を準備しなくても事業を始めることは可能です。しかし、会社の資本金は会社の体力を表しています。つまり個人事業主の元入金は、事業主としての信頼度の大きさに大きく関係します。
たとえば、資本金が1,000万円の会社と資本金が100万円の会社があったとします。この2つの会社が銀行から融資を受けようとした場合、どちらが融資を受けやすいでしょうか。
銀行は、貸したお金が回収されなくなってしまうリスクを避けようとします。資本金が少ない会社よりも資本金の多い会社の方の信用が高くなりますので、資本金が多い会社のほうが融資を受けやすくなります。これと同じように、個人事業主の場合も元入金がゼロで事業を始めるよりも、できるだけ多くの元入金を準備してから事業を始めるほうが事業主としての信頼度を上げられるというメリットがあります。
個人事業主が資本金（元入金）を調達する方法
個人で事業を始めるときに資金調達をする方法には以下のような方法があります。
- 日本政策金融公庫からの借入
- 友人、知人から借りる
- ビジネスローンなどを利用する
- 不動産担保ローンなどの有担保ローンを利用する
これらの方法のメリットやデメリットをご紹介します。
日本政策金融公庫からの借入
日本政策金融公庫からの借入のメリットは、安い金利で借入ができることです。デメリットは、申請のためにはきちんとした事業計画が必要です。他にも個人での申込は審査が厳しい、申請に必要な書類が多いなどのデメリットがあります。
友人、知人から借りる
資金を貸してくれる友人や知人がいれば、お金を借りる方法があります。友人や知人からお金を借りるメリットは、利子やきちんとした返済期間が決められていないことです。デメリットは、利子や返済期間が厳密ではないのため甘えが出てしまう可能性があること、借りたお金の返済ができなくなってしまうと、友人関係が壊れてしまう可能性があることです。
ビジネスローンを利用する
事業資金を調達する方法として、ビジネスローンを利用することもできます。ビジネスローンを利用するメリットは、担保などを準備せずに融資を受けることが可能なことです。デメリットは、審査が厳しく、金利も高いので、事業できちんと利益を出さなければ返済が滞ってしまう可能性があります。
不動産担保ローンなどの有担保ローンを利用する
自分や家族が不動産を所有しているのであれば、所有している不動産を担保にお金を借り入れることができます。不動産担保ローンのメリットは、ビジネスローンなどに比べて低い金利でお金が借りられること、担保があることで審査が通りやすいことです。また、所有している不動産の評価額が高い場合は、高額な融資を受けることも可能です。
不動産担保ローンのデメリットは、返済が不可能になってしまったときに所有していた不動産を失ってしまう可能性があることです。所有している不動産価値によっては高額な融資を受けることも可能ですが、不動産を失わないようにするためには返済計画をしっかり立ててから利用することが大切です。
最後に
個人で事業を始める場合、資本金（元入金）がゼロでも事業を始めることは可能です。しかし、一般的に事業を始めてすぐに利益を出すことは難しいため、開業資金や当面の運転資金を準備してから始めることが望ましいといえます。資本金の調達の方法はいろいろありますが、不動産を所有しているのであれば、不動産担保ローンのような有担保ローンの利用がおすすめです。金利が安く、高額な融資を受けることも可能なので、事業資金を準備する方法としては有効な手段です。
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