キャッシュフローとは簡単に説明すると、現金の流れのことをいいます。一般的な会社の場合、現金取引以外にも掛け取引を行っているため、損益計算書では利益が出ているのに、掛取引による入金や支払いのタイミングがうまく合わなければ、黒字倒産になってしまう可能性もあるのです。そこで今回は、キャッシュフローを改善する方法や黒字なのに倒産してしまう会社と赤字なのに倒産しない会社の違いについてご紹介します。
損益計算書だけではキャッシュフローは把握できない
現金の流れを知る方法の1つに損益計算書があります。帳簿上の利益が出ていれば資金繰りは問題がないと考えてしまう人もいますが、実は損益計算書だけを見てもすべてのキャッシュフローを把握することはできません。なぜなら、掛けによる取引があるためです。
たとえば、掛取引で取引先の会社に商品を販売したとします。帳簿上では商品を販売した時点で売掛金として利益が発生しますが、実際に販売した商品の代金が入金されるのが1か月後だった場合、帳簿上には利益が存在していても利益分の現金が会社にはないということになります。
帳簿上は売掛金という利益が出ていて黒字になっているのに、実際には利益分の現金が入金されていないため、支払いや返済に充てることができなくなり黒字倒産してしまうことがあるのです。
黒字なのに倒産してしまう会社と赤字なのに倒産しない会社の違い
黒字なのに倒産してしまう会社と、赤字なのに倒産しない会社の違いは、実際の利益ではなくすぐに動かすことのできる現金の額の違いです。たとえば、帳簿上は赤字だったとしても、担保になる資産を持っていてすぐに融資を受けることができる場合は、必要な支払いや返済が可能になるため帳簿上は赤字であっても倒産せずに済みます。しかし、帳簿上は黒字だったとしても売掛金が入金される前に支払いや返済をする必要がある場合、すぐに動かせる現金が手元にないため黒字なのに倒産してしまうことがあるのです。
ただし赤字でも倒産しなかった会社でも、赤字経営が長く続いてしまうといずれは倒産してしまうことになります。
キャッシュフローの改善が必要になる理由
キャッシュフローの改善が必要になる理由は、会計上の利益と手元の現金がイコールではないためです。掛取引を行っている会社の場合、売掛金が発生しても実際の入金までに時間がかかることがありますし、商品やサービスを生み出す前に仕入れが必要になり、売掛金を回収する前に仕入れ代金を支払わなければならないケースもあります。経営状態が健全であるかを判断するためには、現金の流れを正確に把握することが大切です。
キャッシュフローを改善するには
帳簿上は黒字なのに支払いや返済がスムーズにいっていない場合は、キャッシュフローを改善する必要があります。キャッシュフローの改善を考える場合に大切なことは、実際の現金の動きを把握することです。現金の動きを把握するための書類として使われているのが、キャッシュフロー計算書です。キャッシュフロー計算書とは、会計期間中の現金の流れを表した書類です。個人事業者の場合はキャッシュフロー計算書の作成義務はありませんが、資金の流れを客観的に把握することもできますし、キャッシュフローの改善を図るためにもキャッシュフロー計算書を作成することがおすすめです。
キャッシュフローを改善するための具体策
キャッシュフローを改善するためには、次のとおり見直しを行ってみましょう。
- キャッシュフロー計算書を作成し、現金の流れを把握する
- 売掛金を回収するまでの期間が短くなるように顧客に交渉する
- 売掛金は確実に回収を行い、売掛金の未回収をゼロにする
- 買掛金の支払いはできるだけ長めになるように仕入先に交渉する
- 無駄な経費を削減し、必要のないキャッシュアウトをできるだけ減らす
- 必要以上の在庫は持たない
キャッシュフローの改善を図るためには、現金の流れを把握することです。経営者であっても、会計書類を頻繁に確認する人はあまり多くはないのではないでしょうか。掛取引がある場合、入金と支払いのタイミングがずれてしまうと必要な支払いや返済ができなくなってしまうことがあります。
このような状態を避けるためには売掛金の回収はできるだけ早く行い、買掛金の支払いはできるだけ長くなるように交渉することです。また、売掛金の未回収分が増えてしまいますと、本来入るべき現金が手元に入らないためキャッシュフローを悪化させる大きな原因になります。取引先に督促を行い、売掛金の未回収はゼロにしましょう。また、無駄な経費を削減する、必要以上の在庫は持たないなど、必要のない現金を使わないように努力をすることも大切です。
最後に
経営者であったとしても、経理の書類にじっくり目を通して現金の動きを正確に把握しているという人は少ないのではないでしょうか。しかしご紹介のように掛取引で商売をしている場合は、必ず帳簿と手元の現金には差が生じます。健全な経営を行うためには、帳簿上の利益ではなく現金の動きを把握することが大切です。個人事業主の場合はキャッシュフロー計算書の作成義務はありませんが、客観的な視点で現金の動きを把握することができるので作成しておくことがおすすめです。その上で今回ご紹介した点の見直しを行い、キャッシュフローの改善を図ってみてください。